親になる

2020年2月17日、長男が生まれた。

 

病院での出産の立会いのときは、分娩台に横たわる奥さんと、生まれたばかりの赤ちゃんを見下ろしていたが、自分が臨終のときには逆にこの2人に看取られるのか、看取ってもらえるよう大切にしなきゃ、などと、赤ちゃんを取り上げた純粋な感動とともに、思ってもみなかった考えが頭の中をよぎった。

 

数日後、出生届を区役所に出し、妻の実家で命名書きを行った。自宅にもマイナンバー通知カードや健康保険証が届き始めると、自分の息子が社会にも認知されていくような実感とともに、やがては独り立ちしてほしい・できるだろうか・この子のためなら自分が何でもしてやりたい、という希望や不安、自分よりも大切なものが世の中にできるという新しい感覚が自分の中に芽生える。

 

母子ともに今週末には妻の実家から私の住む自宅に戻る。新しい生活が始まる。

ベルギー出張

先週1週間、出張でベルギーに行ってきたので、プチ紀行文として気が付いたことをメモしておきます。


■ベルギーの食べ物・飲み物
ベルギーといえばビール、ステーキやソーセージといった地元の肉料理、フライドポテトにもよくあって美味しかった。日本のようにキンキンに冷やすのではなく、常温でいただくのが地元の流儀なのかな。ムール貝のワイン酒蒸しも名物で、バケツのような鍋いっぱいに調理したてを出してくれたものをムシャムシャ食べていくのも良かった。これもビールによく合う。日本で言うと、アサリの酒蒸しみたいな発想の料理なのかな。旅行のガイド本によるとフライドポテト(フリッツ)はベルギー発祥らしいが、ムール貝の蒸し料理は実はオランダ起源で貝もほとんどオランダから輸入してるんだよ、とは今回の出張先で出会った、取引先のお偉いさんの弁。彼はオランダ人で、仕事でこっちにも出張でよく来るんだとか。どこの国や地域でも、ちょっとしたお隣さんとの本家論争ってあるんだよなぁ、オランダとベルギーのご近所づきあいの様子が垣間見れて、このやりとりは面白かった。


■ベルギーの人々
今回はアントワープに滞在しブリュッセルも観光で回ったが、街行く人々はみな親切。道路を横断するときも、たいていのドライバーは車を止めて先に通してくれるし、電車の乗り降りも無理な割り込みはしない。見るからにアジアからの旅行者だったから、というのもあったかもしれないけれど。日本に帰ってくると、電車の順番待ちも駅や道を歩いていても、譲ってくれることはまずないし、でも、これはお国柄というよりは東京の人口密度のせいかもしれない。でも、せめて旅行者には道を譲ってあげるよう、気をつけようっと。

言語はオランダ語方言のフランデレン語が6割、フランス語が3割がほとんどで、1割程度はドイツ語を話すんだ、とはタクシーの運転手の話。ユニクロの店舗も、他のブランドも含めてお客さんは結構入っていてくれたけど、運転手さんのユニクロ受けはイマイチで、ベーシックな商品の色違い・サイズ違いばかりで、バリエーションが少なく見えた点がお気に召さなかった模様。ファッション通りには有名ブランド店が軒を連ねており、競争は厳しそうだ。ここで知名度を上げて地元の人にも気に入っていただけるよう、頑張らないといけません。


■美術鑑賞
自由時間もあり、アントワープノートルダム大聖堂ブリュッセルの王立美術館にも寄ることができてラッキー。

日本人には「フランダースの犬」でおなじみのノートルダム大聖堂ルーベンスの傑作『キリスト昇架』『キリスト降架』『聖母被昇天』が見られて大満足。ブリュッセルの王立美術館の展示も合わせると、これだけまとめてルーベンスの作品を鑑賞できる機会も、一生のうちでもうあるかないか。(ここにまたやってこなければ、もうないでしょうね。ありがたいことです。)

ブリュッセルの王立美術館は、前述のルーベンス作品も楽しめる古典美術館のほかに、19世紀末の作品展示を中心とした世紀末美術館、マグリット美術館と3つの美術館から成っている。ブリューゲル、ボス、マグリットと連なる、フランドル画家のシュルレアリスムの流れを本場で追えるのも楽しかった。

海外の美術館の楽しみの一つは、ご当地作家のまとまった作品群に触れて、今まで知らなかった画家の魅力や画家自体を発見できることにもある。今回、出会えたのはジェームズ・アンソール。調べてみると、日本で楽しめる展示作品は少なく、また、収蔵先はブリュッセルではなく今回閉館中だったアントワープの王立美術館が多いことに気付く。2019年春まで改装工事の予定なので、将来、また来てみたい。


http://kininaruart.com/artist/world/ensor.html

皇后杯決勝

澤穂希引退試合である。INAC神戸レオネッサに対するはアルビレックス新潟レディース女子サッカーは初観戦であったが、見どころの多い好ゲームであった。

 

試合前のシュート練習から両チームは好対照。INACペナルティエリアの半円付近のパッサーからワン・ツーを受けゴール正面からのシュート練習、対する新潟は左サイドからのセンタリングを受けてのシュートを繰り返す。神戸には大野、澤、中島、川澄ら、キープ・突破力に優れた選手が多く、センターにボールを入れて相手ディフェンスを切り崩してゴールを狙える。新潟はパスサッカーが持ち味。内外にボールを回して相手を切り崩すスタイルであることに、試合中、思い当たる。

 

試合前、胸に手を当て遠くを見やる澤がオーロラビジョンに映し出される。スタンドからではあるが、同会場で国歌を斉唱すると自分もうるっと来てしまう。

 

試合は一進一退の攻防が続き、実力伯仲で見ごたえがあったが、やはり神戸が試合巧者であったという印象。縦一本でもセンターラインの選手への玉の収まりが良く、ライン際の競り合いでもスローインペナルティーキックをしっかり取ってくる。公式記録でも、計8本のコーナーキックの機会を獲得し、結果的にこれが澤の決勝ゴールにつながる。野球で言えば、しっかり四球や送りバントを決めてくる、堅実な攻めのできる常勝チーム、といったところか。球際の強さやライン割れをマイボールで終われる駆け引きのうまさ、こういったところに国際大会の大舞台での経験値が出てくる。

 

また、きらりと光るプレイを随所で見せてくれたのは、左サイドバックの鮫島。ともすれば中央突破の多用で単調になりがちな展開に、度々見せるオーバーラップでアクセントを与える。ライン際のキープ力もあり、内と外の二正面攻撃を仕掛けられる相手としては、さぞかしやりづらいだろう。守っても、ワンサイドカットでドリブラーに相対し、中への切り込みを許さない。ペナルティエリア付近のボール処理も落ち着いており、安心して見ていられる。なでしこのスタメンは伊達ではない、さすがである。

試合後、胴上げ・インタビュー・花束贈呈と、皆に決勝ゴールの殊勲を、そして引退の花道を惜しまれながらも祝福される澤選手の笑顔は実に晴れやかであった。公式戦では二度と彼女のプレーを見られないかと思うとこの上なく寂しいが、最後のゴールに立ち会えた幸運を喜びたい。

澤選手、本当にお疲れ様でした。そして、今までありがとうございました。